元シェアハウス住人の日記

とあるシェアハウス住人の日記。シェアハウス要素のない日記も多め。キャンプ初心者。休日はお出かけ派。逆流性食道炎で、お酒を控えて「腹八分目」を実践中。

わたしの「恋愛遺産」

「恋愛遺産」という言葉を聞き、なんて言い得て妙だろうと思った。

この言葉は、桃山商事『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(2019年、文庫ぎんが堂)という本に登場する言葉で、過去の恋愛の思い出がこもったものまたは場所を指す。この本で挙げられていた例としては、元カノの匂いが残ったリネンとか、元カレが設定したままの「テレビの視聴予約」などがある。

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「恋愛遺産」という言葉は一般的ではないが、この言葉が当てはまるものや状況を見聞き、または持っているという人は少なくないであろう。かくいう私にも、そういうものはある。そこで、今回は、過去の思い出を少々恥ずかしくなったりしつつ掘り起こし、自分の恋愛遺産を外観したい。

「マネーの世界史」

これは、Kindleで買った書籍で、購入してもう3年経過しているが、未だに半分くらいしか読んでいない。なぜ買ったのか、そしてなぜ途中で読むことを放棄したのか。

まず、これを買ったとき、わたしには気になっていた人がいた。彼は金融系の機関で働いていて、貨幣とは…通貨とは…みたいなビジネスから少し掘り下がった「そもそも論」みたいな話話するのが好きだった。しかし、私は金融専攻でもなければ、仕事で触れるのは為替レートくらいで、全く話についていけない。そこで、話を合わせるために知識を身につけようと思って買ったのがこの「マネーの世界史」だった。もともと歴史の本は好きで「奇書の世界史」とか「サピエンス全史」とかを読んでいたので、Kindleに「マネーの世界史」が変わってもなんの違和感もなかった。

購入後、この本を読み進めるも、あまり金融に興味がなかったからか、全く読み進められない。歴史に興味があっても、歴史を掘り下げるターゲット(ここではマネー)に興味がなければ、読み進められないものである。Kindleの良い機能として「何冊分ものデータを持ち運べる」ことがあるのだが、この機能のおかげで、私は「マネーの世界史」よりも後にダウンロードした書籍を次々と読み終えていった。興味がある本は一気読みできるか、そうでない本は読書スピードが鈍化する。とはいいつつ、この時点では、読む本がなくなると「マネーの世界史」を開いてはいた。

そうしたある日「この人は脈なしだな」と判断する出来事があった。クリスマスを数週間後に控えたある日、二人でご飯に空かないかと私が提案した。候補日をいくつか列挙し、その中にクリスマスイブとクリスマス当日を入れておいた。クリスマスわ選ばなければフリーということだし、選ばなければ一緒に過ごしたい誰かがいると判断できそうだと考えたからだ。結果、彼はクリスマスの2週間前の週末を選んだ。

食事当日、スープカレーを食べ、腹ごなしに散歩をしたあと、夕方前には解散した。陽気のいい日曜日の昼下がり、まだ日の傾きすら感じられない早めの時間だった。爆速で終了したデートに、もうこの人を追いかけても無駄だ、と諦めがついた。

こうして、相手への興味を失い「マネーの世界史」が開かれることはなくなった。この本を最後に開いた日はしばらく前で止まっている。Kindleは、最近ダウンロードした書籍や、最近読んだ書籍のデータを上に表示するという機能があるため、「マネーの世界史」は何スクロールもしないとそもそも表紙すら見えない、下の地層に表示されている。この表示位置も含めて、わたしの恋愛遺産になっている。好きな人ともっと話したいというピュアな思いから買った本だったが、読み終えるよりも前に、相手への興味を失った。もともと本のテーマに興味があったわけではないので、その後、本は開かれなくなった。

後日談①

あのクリスマス2週間前のデートから約1年後、あの金融系マンと会う機会があった。複数人で、二人で話したのは10分ほどだったので、仕事の話をメインに、お互いのプライベートについては話さなかった。これを最後に、金融系マンとはあ会ってない。
しかし、先日、SNS(相互フォローはしたまま)を見ていたら、なんと金融系マンが結婚を報告していた。いつから相手がいたのかわからないが、ひょっとしたら、あの私が一緒に過ごせなかったクリスマスは、そのパートナーさんと過ごしていたのだろうか。確かめる術も、必要性もないが、可能性を考えて、私はひとり勝手に気まずくなるのだった。

後日談②

時間軸が少し戻るか、気になる相手とクリスマスを過ごせなかった私は、とにかく自分自身を忙しくして恋愛のことを忘れようとしていた。年末は資格試験(これはだいぶ前から申し込みしていたもの)を受け、新年にはなんと引っ越しを決めた。そのうち引っ越ししたいとは思っていたが、意を決して実行に移した。

結果として、この引っ越し先だったシェアハウスで今の彼氏に出会って、いまに至る。

rainsound.hatenablog.com

あのとき、あの相手への興味を失っていなかったら、この引っ越しもなく、今の彼と出会うこともなかったかもしれない、と思うと人生は何がどう絡み合って巡り合うのか、本当にわからないなと思った。ちなみに、今の彼は全く金融とは関係ない仕事をしているので「マネーの世界史」か開かれることは引き続きなさそうである。